歯科口腔外科
基本方針
当科は日本口腔外科学会研修施設、小児口腔外科学会研修施設、顎顔面インプラント学会関連研修施設を取得し治療を行っています。
口腔外科とは口を中心に歯、歯肉、顎骨、顎関節、上顎洞、顔面骨、唾液腺、顔面の神経などを扱う外科です。(※去年実績参照)
当科においては、一般歯科口腔外科はもちろんのこと、総合病院の特徴を生かし、顔面外傷、唇顎口蓋裂、口腔腫瘍等の治療に際して形成外科、耳鼻科とのチーム医療も積極的に行っています。
また、病床を有しており全身麻酔による手術、消炎などの入院治療も可能です。取り扱っている主な疾患は次の通りです。
診療内容
- 埋伏歯・智歯抜歯:顎の中に埋まっている歯の抜歯、親知らずの抜歯
- 嚢胞:顎の中や、口腔粘膜の中に嚢胞ができている場合の摘出
- 歯性感染症:虫歯や歯周病が原因となって炎症を起こし、細菌性の炎症が周囲の組織まで波及してしまう疾患
- 口腔粘膜疾患:口の中に限局するもの、全身疾患の一症状としてあらわれるものなど、さまざまな種類があります。中にはまれに悪性転化して癌化するものもあるので専門的に観察治療します。
- 顎関節症:口が開けづらい症状です。生活指導、薬物療法、スプリント治療を中心として行っています。
- 口腔腫瘍:歯肉、舌、頬粘膜、口唇、顎骨などに生じた良性、・悪性腫瘍の治療
※悪性腫瘍に関しては当院頭頸部科によって行われます。 - 全身疾患を有する患者さんの歯科治療:心臓病、糖尿病、肝・腎臓病などの全身疾患を有する患者さんの治療。
- 障がい児/者の歯科治療:ホームドクターとの協力により、障害児/者学会認定医による全身麻酔下での歯科・口腔外科治療を行っています。
- 離島県における歯科治療であるため、離島の患者の負担を軽減するため、可能な限り現地で手術フォローを行っています。
- 専門的疾患
顎変形症:かみ合わせが悪く、顎や顔の輪郭がゆがんでいる患者さんの手術。
上下顎あるいはオトガイ部を切って咬合をつくります。
審美的な要因に関しては形成外科との協力により治療を提供します。 - 口唇口蓋裂の一貫治療
形成外科医、口腔外科医、産婦人科医、小児科医耳鼻咽喉科医、矯正歯科医、言語聴覚士、看護師などのチーム医療により出生から成人まで専門的な治療を行います。
矯正歯科
矯正歯科診療日
- 毎週月曜日/水曜日/金曜日=県立南部医療センター・こども医療センター歯科口腔外科
- 毎週火曜日/木曜日=県立中部病院歯科口腔外科
- 毎週水曜日=毎月2回午後県立北部病院歯科口腔外科
- 毎月金曜日=毎月1回県立宮古病院歯科口腔外科出張+毎月1回県立八重山病院歯科口腔外科出張
矯正歯科は、歯ならびが悪く、咬み合わせが良くない方を矯正装置により改善していく治療です。装置により、歯の移動を顎の中で行い治療していきます。八重歯、乱杭歯、出っ歯、受け口や前歯で咬み切れないなどが矯正歯科治療の対象になります。埋伏歯や萌出遅延歯、先天欠如歯なども治療に対象になる場合もあります。また、生まれつき顎や歯などに奇形変形がある方や顎のズレが大きい方は顎の手術を前提として顎外科との連携を取りながら治療を行います。
矯正歯科治療の流れ
- 初診・相談
初めて患者さんご本人とお会いします。ご本人の直してほしいところを明らかにし、ご相談を行いつつ、おおよその治療のやり方をお伝えします。治療の同意を得られましたら、次の2.検査になります。 - 検査
治療開始前に、現状の把握と矯正診断のための資料を集めます。
顔貌・口腔内写真、上下顎印象採得による模型作成、規格化された頭蓋のレントゲン(側方・正面)頭部X線規格写真、歯や顎のレントゲン写真、顎関節レントゲン写真など必要な資料を集めます。また、外科手術を予定されている方は、咀嚼筋筋電図と顎関節検査もおこないます。 - 診断
2.検査で得られた資料をもとに、分析を行い、治療目標を明らかにし、具体的な治療方針をお伝えし、使用する矯正装置を決めていきます。また、必要であれば他科とも連携を取り歩調を合わせながら治療を行います。 - 動的矯正歯科治療
基本的に「3.診療」通りに適切な矯正装置を用い治療を行います。治療途中で、予定通りの歯の移動や咬み合わせ、あるいはご本人の都合などに変更が生じた場合は、ご相談しながら今後の方針について決めていきます。また、外科手術を予定している患者さんは、その間、術前検査・入院・手術が入ります。- 来院間隔の目安
固定装置:1回/3~6週間=年間10~14回
可徹式装置:1回/1~3ヶ月
経過観察:1回/3~6ヶ月 - 一般的な通院回数
- 治療期間:約24~30か月
通院回数:24~30回
- 来院間隔の目安
「4.動的矯正歯科治療」により改善した咬み合わせを安定させるための治療です。今まで使用していた装置を撤去し、保定装置により1~2年程度使用します。咬合の安定が見られたと判断されたところで矯正歯科治療は終了となります。
来院回数=1回/月を数回行い、安定が見込まれる場合には通院回数を減らします。また、可徹式保定装置であれば、1日の使用頻度も減らすことも行います。
当院の費用体系
保険適用
⭕️自立支援医療認定指定:唇顎口蓋裂とその他の先天性疾患(※参照)の矯正歯科治療
- 育成医療=18歳未満の患者は医療費の一部が国から補助され、手術や言語治療も対象となります。
- 更生医療=18歳以降は、身体障害者手帳を取得することで医療費の自己負担が軽減されますが、手帳を取得するためには専門医の意見書が必要です。
- 歯科矯正治療は保険適応され、平均的な治療費は約30万円から40万円程度です
⭕️顎口腔機能診断施設認定:外科医による顎矯正手術を前提とした矯正歯科治療(※参照)
- 術前後の矯正しか治療=約20~30万
- 公的医療保険:顎変形症治療は公的医療保険が適応され、高額療養費制度を利用することで費用負担が軽減されます。これらの費用は患者の症状や治療方法によって異なる場合があります。
✤自由診療:公的健康保険適応外
- 当科は主に保険適応症例の治療を行っています。
- 当院に他の疾患ですでに通院され医学的に対処が必要であったり、埋伏歯のご相談や治療など、当科へ通院可能な方を対象としています。
- 費用は保険適応料金表を用い全額負担として用います。
※参照
- 昭和33年(1958年):国民皆保険実施
- 昭和57年(1982年):「唇顎口蓋裂に起因した咬合異常の歯科矯正治療」の保険適応
- 平成8年(1996年):顎変形症術前後の矯正歯科治療が都道府県の指定を受けた医療機関で受けることが可能
◎矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用について
- 可撤式あるいは固定式装置を口腔内で用いますので、違和感や軽度の疼痛を感じることはありますが、数日~1,2週間で少しづつ慣れてきます。
- 歯の動きには個人差があります。予想された治療期間が延びる可能性があります。
- 矯正歯科装置の使用、顎間ゴムの使用など定期的な通院が必要であり、患者さんの協力が大事となり、これらが治療結果や治療期間に影響します。
- 装置の使用により、食物が溜まりやすく装置装着部を中心にカリエスや歯肉炎をきたす可能性があります。また、ブラッシングが難しく虫歯や歯周病が生じやすくなります。当院では、歯科衛生士のブラッシング指導により、上記疾患の予防に努めています。また、次回予約日までの間、患者さんご自身にも口腔内清潔を心がけて頂きます。さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することをおすすめします。
- 矯正歯科治療中に歯根吸収が起こることがありますが、治療期間の長期化を避け、移動のための適切な力加減により歯の移動を図っていきます。
- ごくまれに歯が骨と癒着してしまい歯が動かない場合もあります。
- ごくまれにに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 矯正歯科装置により金属アレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に顎関節疼痛や音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じる場合もあります。
- 治療経過時に、当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
- 矯正歯科装置の誤嚥する可能性があります。
- 矯正歯科装置の撤去の時、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性やかぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。(
- 動的治療を終え装置撤去後、現在の咬み合わせに合わせた状態のかぶせ物(補綴物)や虫歯の治療(修復物)などをやり直す必要性が生じる可能性があります。
- 動的治療を終え装置撤去後、得られた咬合を安定させるために、一般的に1~3年間、保定装置を用いてもらいますが、使用状況が著しくなかった場合は歯ならびや咬み合わせの「後戻り」をきたし、咬合が崩れてしますうことも有ります。
- 顎の成長により咬み合わせや歯ならびが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずの影響や加齢、歯周病などで歯並びや咬み合わせに変化が生じる可能性があります。
- 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
スタッフ紹介
仲間 錠嗣
銘苅 泰明
稲福 玲奈
県立応援医師
天願 俊泉
日本矯正歯科学会認定医
新垣 敬一
口腔外科部長
上田 剛生
口腔外科副部長
小川 千晴
立津 政晴
診療実績
昨年度実績
新患数 | 4,620名 |
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全身麻酔による手術及び歯科治療 | 276件 |
総患者数 | 21,917名 |
学会活動および論文
学会発表
学会名 | 発表年月日 | 演題名 | 発表者 |
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演題番号 | 所属施設 | 共同演者 | |
日本頭頸部癌学会 | 2019/6/14 | 頭頸部癌の放射線治療における口腔合併症予防の取り組み | 上田 剛生 |
P-237 | 沖縄県立中部病院 | 須藤 敏 戸板 孝文 玉城 稚奈 |
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日本顎変形症学会 | 2019/6/8 | 沖縄県立病院歯科口腔外科において過去 6年間に施行された顎矯正手術の臨床的検討 | 上田剛生 |
P-9-3 | 沖縄県立中部病院 | 新垣 敬一 天願 俊泉 伊禮 充孝 比嘉 努 銘苅 泰明 石田 有宏 |
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日本頭頸部癌学会 | 2018/6/15 | 過去10年間における舌癌の臨床統計的検討 | 上田 剛生 |
O-159 | 沖縄県立中部病院 | 須藤 敏 銘苅 泰明 石田 有宏 玉城 稚奈 饒波 正史 |
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日本口蓋裂学会 | 2018/5/31 | 口唇口蓋裂患者の一貫治療の現況 上顎前方部骨延長術の検討 | 新垣 敬一 |
2C-3 | 沖縄県立中部病院 | 天願 俊泉 比嘉 努 仲間 錠嗣 上田 剛生 石田 有宏 西関 修 銘苅 泰明 今井 啓道 前川 隆子 |
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日本口腔外科学会 | 2018/11/3 | 県立病院における顎変形症治療の現状 | 上田 剛生 |
O35-1 | 沖縄県立中部病院 | 新垣敬一 天願 俊泉 銘苅泰明 伊禮充孝 比嘉 努 |
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日本口腔外科学会 | 2017/10/21 | 沖縄県立病院歯科口腔外科における受診患者の現状 | 上田 剛生 |
P62-1 | 沖縄県立中部病院 | 新垣敬一 銘苅泰明 伊禮充孝 比嘉桂子 比嘉 努 澤田茂樹 狩野岳史 天願 俊泉 仲間錠嗣 |
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日本顎顔面インプラント学会 | 2017/12/9 | 作業事故による下顎骨骨折と歯牙欠損に対しインプラント治療を行った1例 | 上田 剛生 |
P2-1-3 | 沖縄県立中部病院 | 銘苅 泰明 新垣 敬一 |
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日本口腔外科学会 | 2016/10/1 | 当科における過去8年間のシェーグレン症候群患者の臨床統計的観察 | 伊禮充孝 |
P64-6 | 沖縄県立中部病院 | 新垣敬一 天願俊泉 上田剛生 銘苅泰明 比嘉努 仲間錠嗣 幸地真人 |
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第60回 日本口腔外科学会 | 2015/10/16 | 抜歯後の止血困難を契機に胸部・腹部大動脈瘤によるDICと診断された1例 | 仲間 錠嗣 |
上田 剛生 比嘉 努 澤田 茂樹 銘苅 泰明 伊禮 充孝 |
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第5回 日本外傷歯学会西日本地方会 | 2015/11/1 | 沖縄県立中部病院における過去40年間の交通外傷の臨床統計的観察 | 仲間 錠嗣 |
上田 剛生 比嘉 努 澤田 茂樹 伊禮 充孝 立津 政晴 |
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第40回 日本口蓋裂学会 | 2016/5/26 | 急速拡大装置を用い前歯部の咬合の改善が得られた一例 | 仲間 錠嗣 |
新垣 敬一 天願 俊泉 |
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第7回 日本外傷歯学会東日本地方会 | 2017/4/16 | 沖縄県立病院における顔面外傷の臨床検討 | 仲間 錠嗣 |
新垣 敬一 比嘉 努 澤田 茂樹 立津 正晴 狩野 岳史 |
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第16回 日本外傷歯学会総会 | 2016/7/16 | 口腔顎顔面外傷に関する臨床的検討 -第2報:顎顔面骨骨折の時代的変遷について- | 狩野岳史 |
沖縄県立北部病院 | 伊禮充孝 幸地真人 銘苅泰明 立津政晴 仲間錠嗣 澤田茂樹 上田剛生 比嘉努 天願俊泉 新垣敬一 |
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第17回 西日本臨床小児口腔外科学会 | 2017/10/1 | 小児シェーグレン症候群の1例と文献的考察 | 狩野岳史 |
沖縄県立北部病院 | 仲間錠嗣 比嘉努 澤田茂樹 新垣敬一 |
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当科における周術期口腔機能管理の取り組み | 比嘉 桂子 | ||
10711 | 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター | 幸地 真人 新垣敬一 上田剛生 伊禮充孝 比嘉 努 |
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当科における周術期口腔機能管理3(在宅)の実態 〜第2報〜 | 比嘉 桂子 | ||
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター | 比嘉 努 仲間錠嗣 新垣 敬一 上田剛生 銘苅 泰明 伊禮充孝 百々健一郎 狩野岳史 澤田茂樹 |
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歯科治療困難症例に対し意識下鎮静での歯科治療を行った一例 | 比嘉 桂子 | ||
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター | 長嶺 和希 寺本 平 比嘉 努 仲間錠嗣 幸地 真人 伊禮 充孝 澤田 南海子 加藤 喜久 |
掲載論文
学会誌名 | 巻;掲載頁 | 表題 | 著者名 |
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発行年 | 所属施設 | 共著者 | |
日本口腔外科学会雑誌 | 62(10):521-524 | 両側口唇口蓋裂を伴う先天性上下顎癒合症の1例 | 銘苅泰明 |
2016 | 沖縄県立中部病院 | 上田剛生 仲間錠嗣 比嘉努 澤田茂樹 幸地真人 |
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日本口腔外科学会雑誌 | 63(9):450-454 | 上顎正中過剰埋伏歯由来の巨大な含歯性嚢胞の1例 | 澤田茂樹 |
2017 | 沖縄県立宮古病院 | 狩野岳史 立津政晴 銘苅泰明 伊禮充孝 比嘉桂子 |
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日本口腔外科学会雑誌 | 65(3): 205-210 | 下顎骨に発生した限局性アミロイドーシスの1例 | 幸地真人 |
2019 | 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター | 銘苅泰明 上田剛生 伊禮充孝 比嘉努 新垣敬一 |
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日本口腔外科学会雑誌 | 65(5): 328-332 | 7歳女児に認めた鼻歯槽囊胞の1例 | 立津政晴 |
2019 | 沖縄県立宮古病院 | 澤田茂樹 狩野岳史 伊禮充孝 上田剛生 新垣敬一 |
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日本外傷歯学会雑誌 | 12:69-74 | 口腔顎顔面外傷に関する臨床的検討 – 過去40年間における顎顔面骨骨折の変遷 – | 狩野岳史 |
2017 | 沖縄県立北部病院 | 新垣敬一 伊禮充孝 幸地真人 銘苅泰明 立津政晴 仲間錠嗣 澤田茂樹 上田剛生 比嘉 努 天願俊泉 |
|
日本口腔外科学会雑誌 | 65:513-518 | 小児シェーグレン症候群の1例 | 狩野岳史 |
2019 | 比嘉桂子 比嘉 努 澤田茂樹 石橋加奈 新垣敬一 |
||
日本外傷歯学会雑誌 | 10(1), 34-39 | 沖縄県立宮古病院における過去10年間の顔面外傷に関する臨床検討 | 仲間 錠嗣 |
2014 | 沖縄県立宮古病院 | 立津 正晴 比嘉 努 上田 剛生 澤田 茂樹 新垣 敬一 |