小児科専門研修プログラム
専攻医(後期研修)/ 小児科
小児科の紹介
沖縄県立中部病院は沖縄本島中部地区のうるま市(人口約13万人)にある急性期病院です。当科は小児科医7人、新生児科医6人、後期研修医3人で外来、救急センター、病棟・NICUでの診療を行っています。小児病棟は37床あり1か月当たり約100人前後の小児が入院します。
NICU18床、GCU18床
当科の特徴
1. 小児救急診療
1次から3次まで対応する北米ER型の救急センターは、1日の受診患者70~120人の内約1/3~1/2が15歳以下の小児です。沖縄本島中部地区
に於いて、walk-inで深夜帯も小児救急に対応しているのは当院のみであり24時間を通して小児患者の受診が絶えません。
受診理由の多くは発熱や咳・喘鳴、下痢・嘔吐・腹痛、痙攣など小児に良くある症状がメインです。多くはありませんが、心肺停止など心肺蘇生が必要な症例が年に数人程度います。救急センターでは初療は救急医が担当しますが、判断が難しい症例、経過観察や入院が必要な症例は当
直の小児科医が診療を行います。
また高エネルギー外傷など、全身管理が必要な外科症例も小児科がバックアップを行います。
2. 入院診療(一般小児)
小児病棟の多くは救急センター経由の入院です。呼吸器・感染疾患(肺炎、気管支炎、細気管支炎、インフルエンザ、アデノウイルス、手足口病など)や気管支喘息、尿路感染、熱性けいれん、脱水症などcommon diseaseが大半を占めます。成長ホルモン分泌負荷試験やアレルギ
ー経口負荷試験も積極的に行っています。新規の入院数は1000~1300人/年前後です。尚、循環器疾患や血液・悪性腫瘍の入院治療について
は他施設に紹介しています。
入院患者様の特徴として、気管切開や在宅人工呼吸器など在宅医療をされている子供たちの比率が多いことが挙げられます。健常児だけでなく
障害を持った子供たちを診ること、そしてその家族を支援することは小児科医を目指す研修医にとって、とても重要な事と考えます。
3. 小児集中治療
急性期人工呼吸などの集中治療はICUにて小児科主体で管理を行っています。RSウイルス細気管支炎や気管支喘息などの急性呼吸不全、脳炎 脳症など高度な全身管理や人工呼吸器管理が必要な症例が対象です。当院にPICUは無く小児集中治療専門医も居ませんが小児科全員で協力し治療に当たっています。治療困難な場合はこども医療センターのPICUへ搬送しています。
4. 新生児医療
当院のNICU(新生児集中治療センター)は、1978年8月1日に開設された県内初、国内でも最も早期に整備されたNICUです。2001年10月
に総合周産期母子医療センターとして認可され、病床数もそれまでの特定ICU8床から12床へ、後方病床(GCU)も12床から18床に増床され
ました。年間350~400人の入院を受け入れています。
当院は小児科専門医研修施設および周産期新生児専門医の研修基幹施設として認定されており、指導医の指導の下初期研修医・後期研修医が
担当医として患者さんの治療にあたっています。
当院で経験のできる症例は下記のようになっています。
- 早産児(在胎36週未満、出生体重2000g未満)
2002年の総合周産期母子医療センター開設以降、当センターの超低出生体重児の生存率は94%です。極低出生体重児の救命率はさらに高く99%が生存退院します。体重が2000gを越えている場合でも、低血糖や呼吸障害がある場合はNICUで治療を行います。 - 呼吸障害の見られる児
低酸素血症や呻吟、陥没呼吸、無呼吸発作を認める児に対して、人工呼吸や持続陽圧換気などの呼吸管理を行います。 先天性の気道疾患に対しては耳鼻科医とともに迅速に対応します。肺高血圧症に対するNO吸入量法も行えます。 - 神経症状のある児
先天性中枢神経疾患(水頭症、全前脳胞症、裂脳症、滑脳症、Dandy-Walker症候群、髄膜瘤など)やけいれん等の症状がみられるお子さんに対し、脳外科医、小児神経専門医と協力して外科治療を含めた全身管理を行います。 - 先天性心疾患が疑われる児
出生後、チアノーゼや心雑音などの症状があるお子さんは、NICUへ入院し精査を行います。 外科手術や緊急処置が必要と判断された場合、南部医療センター・こども医療センターへ転院となりますが、内科的治療で対応できる場合は心臓専門医と連携を取りながら当院で治療を継続します。 - 外科手術が必要な児
当院では鎖肛、食道閉鎖、十二指腸閉鎖、小腸閉鎖をはじめ内反足や関節拘縮、骨折などの外科疾患は小児外科・整形外科と協力しながら対応が可能です。
プログラム紹介と教育ポリシー
初めの2年間は、県立中部病院小児科で一般小児・救急(感染症疾患・内分泌代謝疾患・アレルギー疾患・呼吸器疾患・神経疾患など)を8か 月、新生児疾患を8か月研修します。研修連携施設である南部医療センター・こども医療センター循環器科、血液・腫瘍科、腎臓内科で各2カ 月、県立八重山病院で離島僻地地域における小児医療を1か月研修します。また、沖縄中部療育医療センターにて重症心身障害療育及びリハビ リおよび発達障害児の療育を1か月研修します。興味ある分野を短期間、院外施設で研修することも可能です。専攻医3年目は県内・離島の研 修連携施設(県立北部、宮古、八重山病院)のいずれかで1年間、指導医の下に、主治医として診療を行います。
プログラム年数
3年(主に中部病院及びこども医療センターで最初の2年、県立北部・宮古・八重山病院で後半の1年)
取得可能な専門医資格
小児科専門医
指導体制
指導責任者:金城さおり
指導医:研修医
役職 | 氏名 | 卒業大学(卒業年) | 専門分野 | 資格等 |
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小児科部長 | 金城さおり | 琉球大(1995) | 内分泌 |
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新生児内科部長 | 源川 隆一 | 琉球大(1994) | 新生児 |
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新生児内科副部長 | 木里 頼子 | 奈良医大(1995) | 新生児 |
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新生児内科副部長 | 真喜屋 智子 | 琉球大(1997) | 新生児 |
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小児科副部長 | 又吉 慶 | 琉球大(2001) | 内分泌 小児救急、一般 |
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小児科医長 | 辻 泰輔 | 琉球大(2004) | アレルギー 小児科一般 |
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小児科医長 | 川口 真澄 | 埼玉医大(2004) | 小児一般、救急 虐待対応 |
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小児科医員 | 吉年 俊文(留学中) | 高知大(2009) | 消化器・肝臓 小児一般 |
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新生児内科医員 | 新嘉喜 映佳 | 広島大(2009) | 新生児 |
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小児科医員 | 荒木 かほる | 徳島大(2010) | 小児一般 感染症 |
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新生児内科医員 | 青栁 藍 | 千葉大(2011) | 新生児 |
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小児科医員 | 岩井 剛史 | 琉球大(2012) | 小児一般 |
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後期研修医 | 岡崎 友理子 | 東京女子医(2015) | 小児一般 | |
後期研修医 | 稲嶺 樹 | 琉球大(2016) | 小児一般 | |
後期研修医 | 中司 暉人 | 近畿大(2016) | 小児一般 |
プログラム概要
研修目標
専門性にとらわれず、広い視野をもった子どもの総合医としてこどもを全人的に診療できる
年次ごとの段階的な到達目標
専攻医2年目終了までに離島での小児救急・新生児疾患に対応できる診療能力を身に着けることを目標とします。
研修方略
- On the job training
病棟やNICUでの入院管理、月に7~8回の当直、週に1回の外来診療を指導医とともに行います。 - カンファレンス
- 平日朝7:30~8:20ケースカンファレンスや指導医によるグランドラウンドやレクチャー、全科合同講義、海外からのコンサルタントレクチャーなど。
- 昼13時から30分間コアレクチャー(全科対象)
- 夕方に毎日ではありませんがCPCや医療安全講習、地域開業医との勉強会(CME)などが定期的に行われています。
- 学会活動への参加
沖縄小児科学会、沖縄県医師会医学会総会など県内で行われる学会や各種研究会に積極的に参加しています。県外での学会(日本小児科学会等)へは、演題発表がある場合に年1回まで旅費が支給されます。
研修終了後の専門医取得
当科の研修終了までに、取得に必要な各分野の症例を経験することができます。
研修終了後の進路
一般小児科医として沖縄県立病院に残留する方やサブスペシャリティーを学ぶため、各地のこども病院や専門施設へ移動する方、留学する方など様々です。私達指導医は研修終了後の進路選択についても最大限の支援を行います。