総合診療科専門研修プログラム
専攻医(後期研修)/ 総合診療科
プログラム紹介と教育ポリシー
病院での急性期のケアから、医師一人の離島診療所という家族や地域という枠組みを直接感じることのできる地域医療までプライマリ・ケアの
醍醐味をしっかり研修することができます。
1学年で平均4名程度の研修医が在籍する 日本で最大規模の研修プログラムであり多くの仲間・先輩・後輩とともに学ぶ環境にあります。
プログラム年数
3年間
新・家庭医療専門医(日本プライマリ・ケア連合学会)の取得にはさらに1年(計4年間)
取得可能な専門医資格
総合診療専門医
新・家庭医療専門医
指導体制
指導責任者:幸喜 翔
指導医:村田 祥子、座喜味 盛哉、尾原 晴雄、照屋 周造
プログラム概要
臓器別ではない、患者さんそれぞれのコンテクストを踏まえた診療を行います。総合診療専門研修メインの一つになるのが離島診療所という
環境です。これまで県下の離島医療と従事する人材の確保は当院の研修体制に大きく支えられてきました。沖縄の離島診療所を経験する医師
が「島医者は島が育てる」と言うことがありますが、医師みずからその地域に居住することにより、生活する住民としての視点から患者の家
族、社会や文化的なコンテクストをふまえたサービスを提供します。
病院と診療所、都市部と辺地など多様な環境下で指導医のサポートを受けながら状況に応じた診療を可能にするプログラムです。総合診療部門
を有する病院では患者個人だけでなく家族やコミュニティなど背景を考慮に入れる必要があります。離島での研修はメインの一部であります
が、研修修了された諸先輩は広い意味での地域医療を支えかつ多職種のリーダーとなる人材を輩出しています。
へき地離島の診療所において、常に指導医と相談ができる前述のような環境のもとで医療職のみならず介護や保健に携わるスタッフや行政の
担当と連携し、患者のみならず地域全体をケアするようリソースを有効に活用しその地域特性に応じ在宅医療や緩和ケア、高齢者ケアなどを
提供しています。単独での診療とはなるものの、病院での研修期間に構築した人的ネットワークの活かし、指導医また専門医との顔の見える
相談関係をITと直接に対面の指導体制を強化し研修をバックアップします。
①総合診療専門研修Ⅰ(外来診療・在宅医療中心)、②総合診療専門研修Ⅱ(病棟診療、救急診療中心)、③内科、④小児科、⑤救急科の5つの必須診療科と選択診療科で3年間の研修を行います。
研修目標
明確な目標は「専攻医3年目で医師一人の離島診療所をマネジメントする」です。
当然、日本専門医機構が掲げる総合診療専門医の養成に関する以下の理念を満たしているものです。
- 総合診療専門医の質の向上を図り、以て、国民の健康・福祉に貢献することを第一の目的とする。
- 地域で活躍する総合診療専門医が、誇りをもって診療等に従事できる専門医資格とする。
特に、これから、総合診療専門医資格の取得を目指す若手医師にとって、夢と希望を与える制度となることを目指す。 - 我が国の今後の医療提供体制の構築に資する制度とする。
さまざまな状況の下でこれらの研修を行い多くの職種と専門家との交わる中で
- 人間中心の医療・ケア
- 包括的統合アプローチ
- 連携重視のマネジメント
- 地域包括ケアを含む地域志向アプローチ
- 公益に資する職業規範
- 診療の場の多様性
- 一般的な健康問題に対する診療能力
という総合診療専門医に欠かせない7つの資質・能力を効果的に修得することが可能になります。
年次ごとの段階的な到達目標
- 専攻医1年目
内科、小児科、救急といった総合診療を行う上で柱となる研修を行う - 専攻医2年目
在宅ケア、緩和ケアなど地域を意識した研修を行い、さらに地域基幹病院(県立北部病院、宮古病院、八重山病院)で総合診療医として独り 立ちを目指す。また、臨床研究についても着手する。 - 専攻医3年目
医師一人の離島診療所をマネジメントする。
研修方略
- On the job training
- 臨床現場での学習
職務を通じた学習(On-the-job training)を基盤とし、診療経験から生じる疑問に対してEBMの方法論に則って文献等を通じた知識の収集と批判的吟味を行うプロセスと、 総合診療の様々な理論やモデルを踏まえながら経験そのものを省察して能力向上を図るプロセスを両輪とします。その際、学習履歴の記録と自己省察の記録を経験省察研修録(ポートフォリオ:経験と省察のプロセスをファイリングした研修記録) 作成という形で全研修課程において実施します。場に応じた教育方略は下記の通りです。 - (ア) 外来医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。外来診察中に指導医への症例提示と教育的フィードバックを受ける外来教育法(プリセプティング)を実施します。 また、指導医による定期的な診療録レビューによる評価、更には、症例カンファレンスを通じた臨床推論や総合 診療の専門的アプローチに関する議論などを通じて、総合診療への理解を深めていきます。また、技能領域については、 習熟度に応じた指導を提供します。 - (イ) 在宅医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。始めは経験が豊富な指導医の診療に同行して、診療の枠組みを理解するためのシャドウイングを実施します。ある程度の経験を踏まえ、訪問診療について計画立案し実践します。外来医療と同じく、症例カンファレンスを通じて学びを深め、多職種と連携して提供される在宅医療に特徴的な多職種カンファレンスについて指導医とともに企画運営を行い、連携の方法を学びます。 - (ウ) 病棟医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。入院担当患者の症例提示と教育的フィードバックを受ける回診及び多職種を含む病棟カンファレンスを通じて診断・検査・治療・退院支援・地域連携のプロセスに関する理解を深めます。指導医による診療録レビューや手技の学習法は外来と同様です。 - (エ) 救急医療
経験目標を参考に救急外来や救命救急室等で幅広い経験症例を確保します。外来診療に準じた教育方略となりますが、特に救急においては迅速な判断が求められるため救急特有の意思決定プロセスを重視します。また、救急処置全般については技能領域の教育方略(シミュレーションや直接観察指導等)が必要となり、特に、指導医と共に処置にあたる中から経験を積みます。 - (オ) 地域ケア
地域医師会の活動を通じて、地域の実地医家と交流することで、地域包括ケアへ参画し、自らの診療を支えるネットワークの形成を図り、日々の診療の基盤とします。さらには産業保健活動、学校保健活動等を学び、それらの活動に参画します。参画した経験を指導医と共に振り返り、その意義や改善点を理解します。 - (カ)緩和ケア
主に緩和ケアチームとしてコンサルテーション活動を行います。また、(イ)の在宅担当チームに所属し、在宅療養中の患者の緩和ケアを提供します。 始めは緩和ケアチーム指導医の診療に同行し、主に悪性腫瘍終末期の患者が経験するつらい症状の対処法を学びます。ある程度の経験を踏まえてからは、病状やアドバンスケアプランニングなどについて指導医同席の上で患者、患者家族とコミュニケーションをとれることを目指します。 - (キ)海外研修
ハワイ大学家庭医療講座やカンボジア ジャパンハートこども医療センターなど海外研修が可能。
- 臨床現場での学習
- カンファレンス
各科で毎日平日朝に行われるカンファレンスに出席、また離島診療所赴任後もWeb会議システムを用いた振り返り、ポートフォリオ勉強会など週に複数回のWebカンファレンスがある。
- 学会活動への参加
日本プライマリケア連合学会、沖縄県医学会、日本内科学会などの学会発表の機会がある。
また、琉球大学臨床薬理学講座で1ヶ月の臨床研究に特化した「リサーチローテーション」があり、臨床研究の基礎を学びつつ、論文作成を目指す。
研修終了後の専門医取得
サブスペシャリティー領域として集中治療、ペインクリニック、心臓血管麻酔などがある。
研修終了後の進路
大学院への進学、サブスペシャリティー領域の専門研修も選択できる。