グラム染色

グラム染色

“ No stain, no life.”
これは中部病院6階東病棟に飾ってある格言である。言わずもがな、ここで言う”Stain”とは、当院の教育の根幹を成す「スメア」、すなわち グラム染色のことである。当院では、このスメア教育に、50年間にわたって心血を注いできた。 スメアの威力は絶大である。簡便・安価かつ非侵襲的で、場合によってはものの数分で診断がついてしまう。中部病院では、院内・院外を問 わずすべての発熱患者に対して、原則痰・尿のスメアを行っている。その他便・膿・脳脊髄液検体も含め、あらゆる検体を条件反射で素早く スメアし、その解釈をプレゼンに盛り込む能力が自動的に身につく研修システムを実践している。感染症診療は、将来どの科に進んでも避け て通れない必須のスキルである。それゆえ、ジェネラルマインドを最も重要視する当院の研修システムにおいて、スメア教育は外せない要素 となっている。
スメアの担当者は研修医である。特にインターンは、寺の掃除をする小僧のごとく、毎日スメア室に通い顕微鏡を覗く日々を過ごす。スメア の指導担当は、自分より上の学年の全医師が担当する。また内科だけではなく、外科・小児科・産婦人科などのあらゆる診療科で、日々のプ レゼンにスメアが盛り込まれる。そして、先輩研修医・指導医からスメアに関する容赦ない厳しい質問が飛ぶ。彼らもまた、スメア教育が骨 の髄まで染み付いているのだ。
中部病院のスメア文化は、一度の見学ですぐに体感することが可能である。感染症診療を「見える化」し、治療効果をこの目で体感できる醍 醐味を是非味わっていただきたい。

60代男性、下痢・発熱で来院。
便グラム染色で、白血球の周囲に大量のgullwing(カモメの翼)様の菌体を認める。
Campylobacter腸炎は 便グラム染色で瞬時に診断可能であり、「スメア」の威力を特に実感する疾患の1つである。

40代女性、咳嗽・発熱で来院。
喀痰グラム染色から肺炎球菌肺炎を診断し、喫煙歴がないことから単一菌感染として、初期治療の段階で 狭域なアンピシリンを選択することができた。

80代女性、ステロイド使用者、意識障害で来院。
便の無染色直接観察法「便生スメア」で糞線虫の虫体を確認し、播種性糞線虫症による細菌性髄膜炎の可 能性が強まった。沖縄ではこのような熱帯病も鏡検で診断が可能である。